社交飲食店営業許可(風俗営業1号許可)取得の流れ

社交飲食店営業許可(風俗営業1号許可)取得の流れ

行政書士が解説

1.社交飲食店とは

①社交飲食店の定義

社交飲食店は、風俗営業のうち接待飲食等営業の1号営業許可を必要とする飲食店であり、次のとおり定義されています。

キャバレー、待合、料理店、カフェーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食させる営業

風俗営業等業種一覧(警視庁HPより)

社交飲食店にあたるお店の例としては

  • キャバクラ
  • スナック
  • ラウンジ
  • ホストクラブ など

が挙げられます。

②3つの許可要件を満たす必要があります。

風俗1号営業許可取得には下記の3つの条件を満たす必要があり、これを確認した上で必要書類を準備し、警察署に申請します。

3つの許可要件
  • 人的要件
  • 場所的要件
  • 構造・設備的要件


その後の構造検査に問題がなければ、福岡県では申請から55日以内に許可が下ります。

2.【本題】許可取得の流れ

①許可要件の確認
ポイント:許可要件を満たすか確認

特定遊興飲食店の営業許可を取得するためにはまずは許可要件を満たすか確認が必要です。具体的には下記の三つの要件がクリアできるか自身で確認しましょう。

3つの許可要件を満たす必要がある
  • 人的要件
  • 場所的要件
  • 構造的要件
要件1:人的要件
ポイント:営業者や管理者が欠格要件に該当してはいけない

社交飲食店の営業者及び管理者に対しては、風俗営業同様の人的要件(欠格事由)が定められており、下記の内容に該当する場合には許可を受けることができません。

欠格要件
  1. 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  2. 1年以上の懲役若しくは禁錮の刑に処せられ、又は一定の罪を犯して1年未満の懲役若しくは罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
  3. 集団的に、又は常習的に暴力的不法行為等を行うおそれのある者
  4. アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者
  5. 心身の故障により風俗営業の業務を適正に実施することができない者
  6. 風俗営業の許可を取り消されて5年を経過しない者
  7. 営業に関して成年者と同一の能力を有しない未成年者
  8. 法人の役員、法定代理人が上記1から6までのいずれかに該当する者があるとき

警視庁HPより引用

要件2:場所的要件

特定遊興飲食店の営業には、風営法により営業が制限されている地域が存在します。以下の地域でのみ営業が可能になります。

営業可能エリア
  • 商業地域
  • 近隣商業地域
  • 準工業地域
  • 工業地域
  • 工業専用地域

住居集合地域では営業を行うことができません
具体的には「第一種低層住居専用地域」・「第二種低層住居専用地域」・「第一種中高層住居専用地域」・「第二種中高層住居専用地域」・「第一種住居地域」・「第二種住居地域」・「準住居地域」が営業禁止エリアとなります。

ポイント:保護対象施設から一定の距離が必要

社交飲食店の営業許可を受けるには、風俗営業許可と同様に、営業所が特定の「保護対象施設」から一定の距離を置く必要があります。

保護対象施設
  • 学校(大学除く)
    • 幼稚園、小学校、中学校、 高等学校、中等教育学校、特別支援学校、高等専門学校など
  • 児童福祉施設
    • 助産施設、乳児院、母子生活支援施設、保育所、児童養護施設、障害児入所施設、児童発達支援センター、情緒障害児短期治療施設など
  • 病院
  • 図書館
  • 診療所 

など

保護対象施設からの距離制限
保護対象施設商業地域商業地域以外
学校(大学を除く)70m以上100m以上
児童福祉施設50m以上70m以上
病院50m以上70m以上
図書館50m以上70m以上
診療所30m以上50m以上

各施設からの最低距離は、商業地域では30~70メートル以上、商業地域以外では50~100メートル以上と定められています。この距離は、施設の敷地から測定され、違反すると営業許可が下りません。

要件3:構造的要件

深夜営業を行う際には、風営法の規定が準用されるため、客席の配置や構造に注意が必要です。

営業を行う際には、客席の配置や構造に注意が必要です。

例えば、仕切りや衝立で他の席から見通せないような造りの場合、風俗営業の基準を満たしていないため、警察は届出を受理することができません。

また、図面上で風営法に違反がないように見せて届出をしたとしても、後日その違反が発覚した場合には指導の対象となるので、十分な注意が必要です。

条文をわかりやすくまとめたのが下記の内容です。

構造及び設備の基準
  • 客室の床面積
    • 16.5㎡以上(和室は9.5㎡以上)が必要。1室のみの場合はこの要件は不要です。
  • 客室の内部
    • 外部から客室が見えないようにする必要があり、フィルムや板で完全に目隠しする工夫が必要。
  • 客室の内部構造
    • 高さ1m以上の設備(テーブル、観葉植物など)は見通しを妨げるため設置不可。客室が複雑な形状の場合、複数室としての申請が必要になる可能性があります。
  • 客室の掲示物
    • 善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと。
  • 客室の出入口
    • 施錠は禁止。営業所出入口に鍵があるのは問題ありません。
  • 営業所の照度
    • 5ルクス以上の明るさを保つ必要があり、調光器の使用は禁止です。
  • 騒音・振動対策
    • 騒音又は振動の数値が、条例で定める数値に満たないように維持できる構造又は設備を有する必要があります。
ポイント:場所的要件・構造的要件の確認に事前調査制度を活用しよう

「事前相談」とは福岡県警が独自に設けた制度で、本申請の前に、管轄の警察署が申請者から必要な書類を提出をすれば、構造上の条件(営業所の構造に問題がないか)や立地条件(周辺に保護対象施設がないか)について調査を行うものです。

調査で問題がなければ本申請が受け付けられ、審査が開始されます。
つまり、先述した気をつけるべき問題点を福岡県警が事前に調査をしてくれるものとなります。

許可権者の警察署が現地調査をしてくれるため、見落としがなくなりますし、事前に風俗営業ができる場所かを確認することができるため、不動産を契約した後や内装工事をしてしまった後に許可が取れないというトラブルを避けることができます。

この事前相談制度は必須のものではありませんが、他にも様々なメリットがあります。
メリットに関しては過去の記事で詳しく解説していますので、ぜひ下記からご覧ください

詳細はこちらをクリック
②店舗契約・内装工事の開始
ポイント:許可要件をクリアできた後に契約しよう

店舗契約や内装工事を始めるためには、必ず許可要件をクリアしてからにしましょう。
上記の許可要件を満たしていなければ、許可が下りることはまずはあり得ません。

特に場所的要件に関してよくあるトラブルが保護対象施設が一定距離内に存在するために、不許可になってしまうパターンです。

これら保護対象施設があるかどうかは、地道に現地調査をするしか方法がありません。
一つでも見落としがあってしまってはNGです。

「このビルには他にもスナックやキャバクラなどの風俗営業許可店があるから大丈夫」
とたかを括って契約などを先に済ませてしまうとトラブルになりかねません。

なぜなら申請時点で、保護対象施設が周辺にあれば、許可を得ることができないからです。

ポイント:申請時点で保護対象施設が周辺にあれば許可を得られない

過去に保護対象施設が周辺になくても、新たに保護対象施設ができていれば、不許可となってしまいます。

先に店舗契約や内装工事を進めてしまっていた場合には、違約金や損害賠償金などの金銭的なトラブルとなってしまう可能性がありますし、開業の時期も遅れてしまいます。

④飲食店営業許可の取得

社交飲食店を開業する場合には、飲食店営業許可を取得する必要があります。
後述する添付書類にも飲食店営業許可証が必要になるため、このタイミングで申請しておくようにしましょう。

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⑤管理者の選任
ポイント:管理者を選任する

風俗営業や特定遊興飲食店営業を行うには、「管理者」を選任する必要があります。管理者は店舗の現場業務を管理する店長のような存在です。

管理者選任の条件
  • 資格は不要。先述の人的欠格事由がない
  • 店舗ごとに1人の管理者が必要で、原則として複数の店舗を1人の管理者が兼任することはできない
    • 同一ビル内の店舗などでは例外的に認められることもあります。
  • 営業者(申請者)自身が常駐して管理する場合、営業者(申請者)自身を管理者とすることも可能。
管理者の主な業務
  • 従業者への法令遵守の指導や計画の作成・実施
  • 設備の点検・管理
  • 迷惑防止措置
  • 苦情処理
  • 未成年客への対応
  • 従業者名簿の管理
管理者講習を受ける義務

管理者は必要に応じて公安委員会からの通知を受け、講習を受ける必要があります。

  1. 定期講習
    • 管理者選任年度に1回、以後おおむね3年ごとに実施(4~6時間)
  2. 処分時講習
    • 違反行為により営業停止を命じられた場合、1年以内に実施(4~6時間)
  3. 臨時講習
    • 法改正など特別な事情がある場合に実施(2~4時間)
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⑥必要書類の準備
ポイント:管轄警察署や行政書士に事前相談することをお勧めします

申請に必要な書類は下記のとおりです。
各都道府県や自治体によって必要書類が変わる可能性がありますので、まずは事前に管轄の警察署へ事前相談するのが良いでしょう。

風営法許可は図面の作成をはじめ申請書類の作成に非常に時間がかかります。
その上、並行してスタッフの募集や内装工事の打ち合わせなど行わなければいけません。

当事務所がお忙しい皆様の代わりに、申請を対応させていただきますので、ぜひお気軽にお問い合わせください

お気軽にお問い合わせください。092-725-2275受付時間 8:00-20:00 [ 土・日・祝日対応可 ]

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提出書類
  • 許可申請書 
    • その1
    • その2(A)1号〜3号営業(社交飲食店等)
  • 営業の方法
    • その1
    • その2(A)1号〜3号営業(社交飲食店等)
  • 使用承諾書
  • 用途地域証明書
  • 営業所周辺の見取図
  • 店舗の図面
    • 平面図
    • 求積図
    • 立面図
    • 照明・音響設備の配置図
  • 住民票(申請者用・管理者用)
    • 本籍地付きのもの
    • 申請者と管理者が同一人物の場合は1部でOK
  • 身分証明書(申請者用・管理者用)
    • 申請者と管理者が同一人物の場合は1部でOK
  • 営業許可通知書の写し(飲食店営業許可通知書)
  • 誓約書
    • 個人用
    • 管理者業務用
    • 管理者欠格用
  • 写真2葉(管理者分・3cm×2.4cm)
法人の場合は追加
  • 定款
  • 登記事項証明書
  • 住民票(本籍地記載のもの)
    • 法人登記簿謄本に記載の役員全員分~監査役含む
  • 身分証明書
    • 法人登記簿謄本に記載の役員全員分~監査役含む
  • 誓約書
    • 法人登記簿謄本に記載の役員全員分~監査役含む
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⑦管轄警察署に申請する

3つの要件を満たし、必要書類が揃ったら、管轄の警察署へ許可申請を行います。

実査(実地調査)

風俗営業許可の「実査」とは、申請内容と店舗が一致しているか確認するため、申請後に警察が店舗を訪問する重要な検査です。

ポイント:店舗が営業できる状態でないとできない

検査は申請から2~4週間後に行われ、店舗が営業できる状態でなければなりません。飲食店営業許可とは異なり、工事道具が残っていたり未完成の状態では許可が下りません。

実査内容
  • 店舗が申請した図面通りになっているか
    • 店舗の寸法が図面通りか
    • 音響・照明の種類が申請した図面どおりか
    • イスやテーブルの配置・寸法が図面どおりか
  • 客室の見通しがあるか(1m以上の家具などがないか)
  • 店舗外から内側が見えないか
  • 照明スイッチが調光式でないか
  • 店舗入口に「18歳未満立ち入り禁止」の掲示されているか
  • 店内に「20歳未満のお客様への酒類提供はいたしません」の掲示されているか
  • 店内の見やすい場所に料金表が掲示されているか
  • 防音対策が講じられているか
  • 従業員名簿が用意されているかどうか

など

上記はあくまで、例となりますのでご注意ください。

詳細は別の記事で解説していますので下記からご覧下さい

詳細はこちらをクリック
⑨消防手続き

飲食店を開業する際には消防の手続きも必要です。

例えば、店舗全体の収容人数が30人を超える場合、「防火管理者」の設置が必要です。この収容人数は従業員の人数も含まれます。

具体的には、以下の書類を管轄の消防署に提出します。

  1. 「防火対象物工事等計画届出書」
  2. 「防火対象設備使用開始届」
  3. 「火を使用する設備等の設置届」
  4. 「防火管理者選任届」

届出のタイミングは、申請する書類によっても違いますが、店舗の使用開始の7日前までに、消防署長への届出が必要とされているものもあるので注意が必要です。

尚、都道府県や管轄警察署によっては上記の消防法に関する届出のうち、必要のないものもある可能性がありますので、事前に管轄の消防署に確認することをお勧めします。

⑩許可証の交付
ポイント:申請後およそ2ヶ月で許可がおりる

不備がなければ、申請からおよそ2ヶ月(標準処理期間は55日、官公庁の休業日を除く)で許可が下ります。実査が終了してからしばらく審査期間を経て、最終的に許可証が交付される流れです。

許可取得後も考慮する点はたくさんあります。
過去の記事で解説しておりますので、下記からご覧ください。

詳細はこちらをクリック


3.まとめ

以上、社交飲食店の許可取得までの流れについて解説しました。

ポイント:申請は慣れていないと時間がかかる申請です

風俗営業許可や深夜営業許可は正確な申請書類の記述はもちろんのこと、図面の作成が必要です。作成には時間がかかるのもちろんのこと、補正があれば何度も管轄警察署に足を運ばないといけません。

ただでさえ許可が下りるまで55日間かかる風営法許可、オープンを急いでいるのであれば正確な申請が必要です。

ポイント:開業の準備をしながら申請ができるでしょうか?

その間、
・お店の内装工事のお打ち合わせ
・ホームページやSNSでの集客の対応
・キャストの募集

など並行して行わなければなりません。そんなお時間が作れますか?

ポイント:風営法は厳しい法律です。

さらに風営法は厳しい法律です。無許可で営業を行なったり、不正手段で許可を取得した場合には2年以下の懲役または200万円以下の罰金もしくはその両方が課されます。
一度違反行為をしてしまうと風営法の欠格事由に該当し5年間新規申請ができなくなってしまいます。

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